homerhymester blog2006142
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またも本当に気が滅入る話ですいやせんねぇ(文章アップ済)
2006.5.11 23:50:00
(注意!:嫌な気分になりたくない人、
特に猟奇事件が苦手な人はとっとと飛ばすように!)ということで最近一気に読み終えた本。
『消された一家 北九州・連続監禁殺人事件』
(豊田正義/新潮社)
一人の男の支配下で、
監禁された(壮年男性から10歳以下の児童までを含む)家族が、
暗に(←ここポイント)命じられたままに
互いに監視、虐待、拷問を繰り返し、
ついには順番に殺害、遺体の解体にまで手を染めていったという、
にわかには信じ難いほど異常なこの事件。
「え、何でそんなことになっちゃうの?」という疑問が解消されないまま
ずっと頭の隅に引っかかっていたので、
前からこのノンフィクションは読みたかったのです
(同じ事件を扱った佐木隆三版も近いうち読み比べなきゃなと)。例えばこれが、
いやぁコイツはとんでもない快楽殺人鬼でした、
という話なら、
そうやってカテゴライズ出来るぶんある意味安心出来るというか、
テレビのワイドショーなどでもずっと
(あえて言わせてもらえば『エンターテインメント』として)
取り沙汰しやすかったのではないかと。
でもこの主犯格:松永太、
客観的に見ればよくいるエゴの肥大した俗物でしかなく、
殺人や遺体解体も、
ゴミを出すとか洗濯物を干すとかと同じく、
「めんどくさいけど、やるか」的なごく日常の実務のようにこなすばかりで、
そこに「快楽殺人」的なファンタジーの介在する余地が全くない。
拷問や虐待だってサディズムって言うほど立派なもんじゃないっていうか、
思想性は皆無、単にエバるための手段のような。
つまり、事の重大さに対して余りにもその実像が軽く、
だからこそより救いがないという。
その点、「ボディーは透明」という、
これまたしょーもなくも恐ろしい名言で知られる
「埼玉県愛犬家連続殺人事件」主犯:関根元にも通じるあたり。
まぁ彼の場合は解体中の死体を嬉々として屍姦するような
分かりやすい「怪物性」も垣間見せるのに対し、
松永は徹底して「自分の手は汚したがらない」ところにまたミソがあるのですが。
ちなみに「ボディーは透明」の詳細については
犯罪実録物の傑作『共犯者』(新潮社)をぜひ!

(現在は『愛犬家連続殺人事件』に改題して
角川文庫から出ています
……と思ったら、どうやらこちらも絶版?)話を「消された家族」に戻しますと、
じゃあ被害者たちは、
何だってそんな安っぽい男の馬鹿げた命令に大人しく従って、
自ら家族を手にかけるという本来なら最も避けたいであろう行為や、
いずれは自分の死をも招くに違いないはずの過酷な状況さえ、
易々と受け容れてしまった(ように見える)のかと。
抵抗したり、脱出したりすることも出来たはずではないかと、
当然そういう疑問が出てくるわけですが。
私が思うに、
人間関係、特にその力関係は、
いったん固定されてしまうと後からそれを覆すのはなかなか難しいと。
例えば、ある集団の中で特に強い発言力を持つ人物がいるとして、
時に彼の言うことに多少の違和や嫌悪を感じることがあったとしても、
それをわざわざ表明することで、
彼との関係性、ひいてはその集団と自分との関係性が
根本から壊れてしまうようなリスクは避けたいと考えるのが人情というもので、
とりあえずはそれを我慢して承認してしまう……
というようなことは、
「普通の」人生にもしばしば起こる話なわけです
(もしかしたら自分が『彼』側のパターンもあるでしょう)。
だとしたら、それが「閉じた」集団であればあるほど、
「多少の違和や嫌悪」の度合いがどんどん常軌を逸していったとしても、
当人たちにはそうと自覚されない可能性は十分あるはず。
家族同士が「互いに監視、虐待、拷問を繰り返し、
ついには順番に殺害、遺体の解体にまで手を染めていった」
という「信じ難いほど異常な」行為は、
やはり全くもって日常的な風景の延長にあったからこそ、
可能になったのです。松永サイドの親類が一切取材拒否しているため、
成育環境などそのバックボーンはほとんど掘り下げられていないのが
本書の弱点と言えば弱点なのですが、
以上に述べたような理由から、
多分そこからはそれほど大した話は出て来ないのではないか、
という気が私はします。
「自分に可能な範囲で他人を徹底的に支配したがる」ヤツなんて、
つまんないもの、ありがち過ぎて。そして、だからこの事件は、本当に不快なのです。
(宇多丸)
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(前日記の補足)一応バランスを取るために
2006.5.10 18:59:00
『ダーウィンの悪夢』の視点は(多分に“ヨーロッパ的に”)偏っている、
という批判も少なくないので、そのあたりのリンクを貼っておきます。
http://jatatours.intafrica.com/habari49.html
まぁこの人はタンザニア旅行のコーディネーターしてるんだから、
ムカッと来るのは当然だよな。
もちろんこんな「暗部」だけがムワンザやタンザニアの全てではないでしょうし、
その意味で言えば『ダーウィンの悪夢』が、
意図的にショッキングなエピソードを羅列している、
やはり一種の「モンド映画」なのは間違いないと思います
(あ、でも、ヤコペッティ的な『ヤラセ』とは全く違いますが、もちろん)。ただ、公式HPで監督が
「同じような映画はシエラ・レオーネ
(筆者注:カニエの歌に出てくるあそこですね)
でも撮れただろう、
魚がダイヤモンドに変わるだけで。
ホンジュラスならバナナだし、
リビアやナイジェリアやアンゴラなら原油だ」
と語っているように、
このフィルムが提示しようとしている問題は、
もう少し普遍的なものであるような。
ま、例えばそういう「モノカルチャーの功罪」の
“罪”だけにスポット当て過ぎって言われてもいるわけだけど……
えーとだからアレだよ、
完全に「中立な」作品なんて有り得ないんだから、
何であれ、それを分かった上で見ろってことです!
当たり前の話なんだけど、
ことドキュメンタリーに関しては
「中立」幻想が根強い気もするので、改めて。(宇多丸)
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楽しい日記の合間にすいやせんねぇ
2006.5.10 02:57:00
(注意!:以下、本当に気が滅入る話である上に、
画像が多いこともあって恐ろしく長い記事になってしまったので、
興味がない人はさっさと飛ばすことをお勧めします)ということで前にこの日記
/rhymester/blog/2006-04-25
で触れたドキュメンタリー、
『ダーウィンの悪夢』
(公式HP http://www.darwinsnightmare.com/)。

訛りのきっつい英語に苦労しながらも、
前にもリンクを貼った柳下殻一郎さんの日記や、
http://www.ltokyo.com/yanasita/diary/05101.html
DVDを貸してくれた高橋ヨシキさんの解説にも助けられつつ、
何とか観終わりました。
やはり壮絶な内容だった……
「この世には地獄が存在します。この映画こそその証拠です」
(前述柳下さん日記より)と思ってたら何だよ、
今年の3月だかにNHKのBSで放映したらしいじゃん!
字幕だってバッチリ付いてたってことだよな。
くそっ、単に俺が遅いだけだったのか……
このためにプレイヤーまで買って、バカみたいだ!
まぁ飛躍的に観れるソフトの幅が拡がったから
それはそれで全然いいんだけどさ。
ともあれもう、頑張って画面撮りもしてしまったので、
いくつかハイライト・シーンをご紹介。これが問題の魚、ナイルパーチ。

60年代にアフリカ最大の湖、ヴィクトリア湖に放され、
あっと言う間に他の魚を食い尽くしてしまう。
舞台となるタンザニア側の湖畔の土地、ムワンザでも、
昔から営まれてきた漁業は壊滅。
その代わり、このナイルパーチをこんな風に

ザクザク

工場で切り身にして海外へ輸出する一大産業が出現した
(日本でも回転寿司などでスズキと称して出されているそうです)。そのための貨物機が頻繁に行き来する地元空港。
しかし通信機が故障したままなため、
常にテンパりまくっている管制官が

ランプを手で動かして何とか着陸を誘導している。
こんな調子だもんで滑走路近くには

いくつもの飛行機の残骸が散らばりっ放し。
また、ウクライナ人パイロット操るそれら貨物機の積み荷は、
飛び立つ時にはもちろん魚だが、
やって来る時は銃や兵器なのではないかという疑惑が。ところでこの加工ナイルパーチ、
高価なので、
今や唯一の地場産業である工場で職を得ていない
地元の貧乏人たちにはまず、食べられない。
かつては湖で小魚がいくらでも採れたんだけど……
そこで人々が何を食っているかと言うと。

工場からは、ナイルパーチを切り身にした後の残り、
つまりアラが大量に捨てられる。
見渡す限りの魚の残骸。それを……

手で拾って干す。

文字通り正視に耐え難い光景なのでここに画像は載せないが、
そこらじゅうに蛆虫がうごめきまわる、
信じ難いほど不衛生な環境。

汚物から生じるアンモニアガスによって、
ここに従事する一人の女性の片目は完全に腐れ落ちている。
そうして干したアラを鉄鍋で揚げて

何とか食べ物にしているわけだ。

工場を経営しているのは外国人、多分インド系。
(訂正:インド系のタンザニア人だそうです)
壁に貼られるカレンダーにはこんな言葉が。
「あなたは巨大なシステムの一部なのです」

あるいは、
オフィスにある置物を社長が作動させると……

魚がピョコピョコ動いて、
ボビー・マクファーリンの『Don’t Worry, Be Happy』を歌い出す……
まるで出来過ぎた悪質なジョーク!
ヒップホップ畑の人間としてはここで当然のように
パブリック・エネミー『Fight The Power』の歌詞を
思い出さずにはいられませんでしたYO!
「『Don’t Worry, Be Happy』がNO.1ヒットだって?
ふざけんな!
俺が同じことを言ったら今この場で殴られても仕方ねぇだろうぜ」すでに述べたように産業は魚工場しかないので、
そこで働けない女性は売春でもするしかない。
これまた当然のようにエイズも蔓延しまくっているのだが、
指導者としてコンドームの使用をもっと積極的に呼びかけるべきでは、
との問いに、地元の神父はこう言い放つ。

「えーとあの、コンドームは(カトリックでは)罪だから」その一方、会心の笑みで
「早く戦争になんねぇかなぁ〜」と語る「水産研究所」警備員。
「だってそれが一番稼げるからな」

「えっ何、お前、戦争怖いんだ?
(心底不思議そうに)あっそお。へぇ」


彼は毒を塗った矢と弓で武装している。奪い合った食べ物を凄まじい形相で貪るストリート・チルドレン。

彼らが湖のほとりで燃やしてその煙を吸っているのは……

魚の運搬用の発砲スチロールだ。
ドラッグ代わり、いつでもどこでも眠れる効果があるという。
異常行動を招くこともあるなどという例を挙げるまでもなく、
危険極まりない行為。

もちろん、二度と起きてこない子もいる。

全てはあの、外来魚の放流から始まった……
しかし、そのナイルパーチの収穫量も、
このところ年々激減しているという。
残されたたったひとつの資源も食いつぶしたその後は、
どうする、どうなる?とまぁ、環境破壊以上に、
社会システムと何より人心の荒廃に
より深刻な「取り返しのつかなさ」を感じさせる、
実にハードかつモンドな一編でした。
件のBS放映時の録画とか観る機会があったら皆さんもぜひ……
て言うかそれは俺も観たいんだよ!おまけとして、
数年前、某テレビ番組の企画で
このヴィクトリア湖に(ケニア側から)訪れた日本の若者たち。

ちなみにこれは「ケニア流の洗車」らしいから
特に彼らが何か傍若無人なわけじゃないんですよ、念のため!(宇多丸)
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このBLOGについて
【管理:スタープレイヤーズ】ライムスターメンバー、スタッフが書き込みます。
2018年10月に旧ライムスターブログ、11月にマボロシブログ『マボロシ 坂間大介 Rec日記』を統合し、全ての時代のライムスターブログがここに集まりました。
RHYMESTER(ライムスター)
1989年結成。宇多丸(ラッパー)、Mummy-D(ラッパー/プロデューサー/またグループのトータルディレクションを担う *作編曲家としての名義はMr. Drunk)、DJ JIN(DJ/プロデューサー)からなるヒップホップ・グループ。自他共に認める「キング・オブ・ステージ」。フィジカルとエモーションに訴えかけるパフォーマンスと、当意即妙なトークによって繰り広げられるライブに定評がある。1980年代後半、まだヒップホップが広く一般に認知されるはるか前より「日本語でラップをすること」の可能性と方法論を模索。並行して精力的なライブ活動を展開することによってジャパニーズヒップホップシーンを開拓/牽引してきた。近年はグループとしての活動に加え、各メンバーがラジオパーソナリティーや役者など活躍の場を拡大。結成30周年を迎えた2019年にはアニバーサリー企画としてグループ史上最大規模の47都道府県48公演に及ぶ全国ツアーを敢行、成功へと導いた。
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