homerhymester blog1654
-
「考えるな、感じろ……!」が正しい理由
2006.4.5 04:53:00
友人の高橋ヨシキさんから薦められた
『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』(紀伊国屋書店)
ようやく読了。560ページ以上もある大著だけど、
「情報を処理する」とはどういうことか等々、前提となる理論の積み重ね
(それも決して難解過ぎるということはない)を除けば、
核となる主張は以下のようにごくシンプル、かつ超刺激的なもの。【人間の脳全体が受け取っている
毎秒1100万ビット以上もの膨大な情報量に対して、
我々の「意識」の処理能力は、毎秒わずか数十ビットから数ビットに過ぎない】【我々が何かをしようと「意識する」よりも早く、
我々の脳はその方向に動き出している……
つまり、「意識」が我々の行動を決定しているのではない】【何かが起こったことを我々が「意識する」までには0.5秒の遅れが生じる……
にも関わらず、我々はその0.5秒を事後的に「繰り上げて」意識することで、
「今、この瞬間」を生きているかのように錯覚している】要するに人間の意識とは、
言わばコンピュータにとってのデスクトップ画面のようなもの——
例えば「ファイル」やら「ゴミ箱」は、
必ずしもコンピュータがしている仕事そのものとは合致しないどころか、
実際には存在しないシンボルに過ぎないのだけど、
そのようにコンピュータの働きを極度に単純化してマクロ的に把握する方が
ユーザーである我々にとっては遥かに効率が良いために生み出され、
今となってはもはや誰もそれをまやかしであるとはわざわざ思い出しもしないほどに
普及〜定着しきった虚像——なのだと。
この比喩は本当に的確で分かりやすい、本書のキモだと思います。さらに
【意識なるものが人類に芽生えたのは、せいぜい3000年前程度のことかも】
とまで! わーお。
じゃあその前はどうしてたんだ?という話をもっと突っ込んだのが次に読む予定の
『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』(紀伊国屋書店)。同じ実験結果を元にしてるから当然っちゃ当然なんだけど、
一昨年読んだ『脳はなぜ「心」を作ったのか』(筑摩書房)と良く似た仮説、
ただそっちは後半がえらく暴走気味だったからな……ともあれこれって、
「この私」こそが自分という存在の主人であるという日常的実感、
と言うか常識的感覚からは完全に乖離している、
ちょっととんでもない話なんですが……私の場合であれば、
ことラップを書いたり、パフォーマンスする時の経験に引き寄せて考えると、
非常に納得出来るものがある。
作詞という作業はまさしく意識から無意識への必死の呼びかけそのものだし
(だからこそほとんど何も出来てない段階でもなぜか
『いずれ宇多丸が何とかしてくれるだろー』という
どこか他人事めいた確信があったりするのかと)、
ライブの最中に何かを「意識」などしたが最後、頭の中は真っ白になってしまう
(リリックはもちろん、音響、照明、他のメンバーの動き、
喉の渇き、便意、最前列のお客さんの顔、この後の予定、預金残高などなど、
毎秒数ビットで処理し切れるわけもない量の情報が
一斉に『意識』に襲いかかってくるわけで……
逆に、『新しい歌詞って一回でも人前でやるとなぜか憶えるよね』
というライムス内定説も、
一旦意識にそういった『過負荷』をあえてかけてやることで、
荒療治的に無意識を活性化させるということなのでしょう)。もちろんこれは、だから皆さん何も考えなくていいよと言ってるんじゃなくて、
意識による長期的な方向づけや積み重ね=勉強とか練習
(時としてそれは反射的な欲求には反しているかも知れない)
があってこそ、大局的にもより「正しく」無意識は働いてくれるし、
それを知っている「この私」も安心して身を委ねることが出来るということ。
再びライブの例で言えば、
まずは反射的に「正しく」パフォーマンス出来るところまで
練習を徹底させたその後でこそ、
そこに「意識的な」逸脱を仕掛けることも可能になったりするわけで。
逆に言えば、
「この私」に出来ることはその程度でしかない、ってことでもあるのですが。あと、『ブラスト公論』での
「ほんとの自分」「属性としての性格」幻想批判にもリンクする話かも。
「この私」が思ってるよりずっとずっと「自分」の境界線は曖昧、
と言うか把握し難いものなんだと。実に「考えるな、感じろ」とは、
「意識」の限界を知りその外側にある力を解き放てという、
科学的にも超正しいメッセージだったわけですね!
何しろ「考える」だけで絶対に0.5秒は遅れるんですから。
しかも本人はそれに気づかない……確かに戦闘には命取りだ!
本書にある「西部劇の悪役が一騎打ちで必ず負ける理由」
(ここまで読んだ人なら大体理屈は想像つきますよね)
にも思わず納得しつつ笑ってしまいました。面白い本です!
(宇多丸) -
Springroove前夜に見ていたDVD二本
2006.4.4 22:17:00
まずは『銀河ヒッチハイク・ガイド』。
原作の方は全く読んだことなかったんだけど、
もしくは読んだことがなかったためか、
久々に「ちゃんとSFしてる」、いい意味で地味な映画を観たなぁっていう、
なかなかの満足感。
何より、とかく世界に過剰な「意味」を求めがちな我々の価値観を、
根底から「ヒザかっくん」しては喜んでる、みたいなこの姿勢——
『ブラスト公論』で言う“ウヒヒ”ってこういうことよ!
以下多少ネタバレ含むので要注意。オープニングが超最高。
「地球で二番目に利口な生き物」イルカマン……じゃなくてイルカちゃんが、
人類(『地球で三番目に利口な生き物』)へ最後の『贈る言葉』を大合唱!
地球に降り立った直後、
自動車を「支配生命体」と勘違いして握手しようとしている
『ヒッチハイク・ガイド』著者↓モス・デフ。
芸達者ですこと! ムカつくくらい!「真性人間性プログラム」を装備しているため
落ち込みやすいロボット↓マーヴィン。可愛い!
ついでに宇宙船のドア開閉音が「ため息」だったり。一番の爆笑シーンは何と言ってもここ。
宇宙史上二番目に高い知能を誇るコンピュータ、
「ディープ・ソート」が、
750万年の思考を経て、
ついに「究極の問い」に答える!
ワーワー
早く言えー
中途半端過ぎ! まだ全然割れるし!
元気が出る結論だなぁ!もう一本は、
ジョン・ブアマン監督の『脱出』(72年)。
最近の『ミュンヘン』や『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
/rhymester/blog/2006-03-15-1
のように、
「本来なら古典的な娯楽作品として語られていたであろう設定をあえて使いつつ、
それを確信犯的に相対化してみせることで、観客の価値観に揺さぶりをかける」
試みというのは、そもそもアメリカン・ニューシネマ的でもあるわけで。
この『脱出』も、
手に汗握るサスペンス……になってったってお話的には全然おかしくないだろうに、
ここで容赦なく、そして淡々と浮き彫りにされていくのはむしろ、
主要登場人物のほぼ全員がそれに捕らわれ、振り回されている、
「男らしさ」という名の病理の方だと。
例えば、見るからに頼りがいのある、
圧倒的に「男らしい」存在としてのバート・レイノルズ
(当時の押しも押されぬセックス・シンボル俳優ですよ、念のため)
の使い方など、まさに「確信犯的」。出る方も勇気要ったはずだよなぁこれ
(ちなみに構成が『エグゼクティブ・ディシジョン』に流用された?
もちろんあちらは完全に『古典的な娯楽作品』ですが)。
あと、現在は主に
ヴァーホーヴェン映画の悪役として皆さんに愛されているロニー・コックスが、
ここでは最も非マッチョなキャラを演じているのも面白かったです。
そして『スーパーマン』のオーティス役でお馴染みネッド・ビーティは、
今回「男らしさ」の最悪の被害者に……ブヒーッ!
この流れで『ブロークバック・マウンテン』観に行けばちょうどいいのか?
(宇多丸) -
15時28分、(Views of staff)
2006.4.3 21:29:00
スタッフの視点で。
12:30-出社
ライムスターの取材掲載誌を確認。
“Dairy Yomiuri”が想像以上に誠実な書きクチでホっ。
(http://www.yomiuri.co.jp/dy/features/arts/20060330TDY13002.htm)13:00-会議
昨日のSpringrooveの感想をスタッフがそれぞれに。
概ね好評。
例のコラボも練習して挑みましたしね。
(3/31-リハーサルw/FIRE BALL)14:30-宇多丸が事務所にきた。
本日も撮影のため。
(/rhymester/blog/2006-04-03-1)
用事で事務所に来ていたトリカブトのバケラッタをつかまえて先輩トーク。
14:45-歌詞書きシーンの撮影に向かう。
都内某所。
噴水でたたずみ……
売店でコーヒー・ブレイク
レコーディング中は、ココから
「あっ、キシくん?ごめん。あと2時間くらいで(歌詞が)出来ると思います。すみません。先にみなさんで食事とかしてて……」
と、いつもの電話をかけてくるのだそう。
歩きながら
色んな情報を仕入れて、
撮影中のモデルさんとか横目に、
ノートには「けしからん!」と。
15:30-宇多丸、TFM「WANTED!」の件、カル打ち合わせのあと現地解散。
会社へ戻る。
(ライムス・マネ/記)
profile
このBLOGについて
【管理:スタープレイヤーズ】ライムスターメンバー、スタッフが書き込みます。
2018年10月に旧ライムスターブログ、11月にマボロシブログ『マボロシ 坂間大介 Rec日記』を統合し、全ての時代のライムスターブログがここに集まりました。
RHYMESTER(ライムスター)
1989年結成。宇多丸(ラッパー)、Mummy-D(ラッパー/プロデューサー/またグループのトータルディレクションを担う *作編曲家としての名義はMr. Drunk)、DJ JIN(DJ/プロデューサー)からなるヒップホップ・グループ。自他共に認める「キング・オブ・ステージ」。フィジカルとエモーションに訴えかけるパフォーマンスと、当意即妙なトークによって繰り広げられるライブに定評がある。1980年代後半、まだヒップホップが広く一般に認知されるはるか前より「日本語でラップをすること」の可能性と方法論を模索。並行して精力的なライブ活動を展開することによってジャパニーズヒップホップシーンを開拓/牽引してきた。近年はグループとしての活動に加え、各メンバーがラジオパーソナリティーや役者など活躍の場を拡大。結成30周年を迎えた2019年にはアニバーサリー企画としてグループ史上最大規模の47都道府県48公演に及ぶ全国ツアーを敢行、成功へと導いた。
links
RHYMESTER Official Site
www.rhymester.jp
RHYMESTER Official Twitter
@_RHYMESTER_
RHYMESTER Official Instagram
@rhymester_official
DJ JIN Official Twitter
@_DJ_JIN_
アフター6ジャンクション|TBSラジオ
www.tbsradio.jp/a6j
BUBKA WEB(ブブカ・ウェブ)
www.bubkaweb.com
F30プロジェクト〜リーダーとして働く女性へ〜 by女子部JAPAN
joshibujapan.com
バラいろダンディ | TOKYO MX
s.mxtv.jp/barairo
recent posts
categories
archives
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 |
22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
29 | 30 |
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年4月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月
- 2013年3月
- 2013年2月
- 2013年1月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月
- 2012年9月
- 2012年8月
- 2012年7月
- 2012年6月
- 2012年5月
- 2012年4月
- 2012年3月
- 2012年2月
- 2012年1月
- 2011年12月
- 2011年11月
- 2011年10月
- 2011年9月
- 2011年8月
- 2011年7月
- 2011年6月
- 2011年5月
- 2011年4月
- 2011年3月
- 2011年2月
- 2011年1月
- 2010年12月
- 2010年11月
- 2010年10月
- 2010年9月
- 2010年8月
- 2010年7月
- 2010年6月
- 2010年5月
- 2010年4月
- 2010年3月
- 2010年2月
- 2010年1月
- 2009年12月
- 2009年11月
- 2009年10月
- 2009年9月
- 2009年8月
- 2009年7月
- 2009年6月
- 2009年5月
- 2009年4月
- 2009年3月
- 2009年2月
- 2009年1月
- 2008年12月
- 2008年11月
- 2008年10月
- 2008年9月
- 2008年8月
- 2008年7月
- 2008年6月
- 2008年5月
- 2008年4月
- 2008年3月
- 2008年2月
- 2008年1月
- 2007年12月
- 2007年11月
- 2007年10月
- 2007年9月
- 2007年8月
- 2007年7月
- 2007年6月
- 2007年5月
- 2007年4月
- 2007年3月
- 2007年2月
- 2007年1月
- 2006年12月
- 2006年11月
- 2006年10月
- 2006年9月
- 2006年8月
- 2006年7月
- 2006年6月
- 2006年5月
- 2006年4月
- 2006年3月