homerhymester blog20071204post
-
(昨夜)森田芳光監督版『椿三十郎』を新宿バルト9で観てきた
2007.12.4 21:25:00
(以下、
言わずもがなという気がしなくもない文句だらけのやや長文、
そのうえネタバレ的な要素も含むので、
特に、リメイクの成否を自分の目で確かめたいという人は、
鑑賞前には読まない方が。)結論から言えば、
とにかく全編にわたって、
オリジナルの黒澤版のなぞり方が、中途半端過ぎ!
シナリオはほぼそのまま使われている一方で
(すごく細かいところはいじってある/例:奸物→悪人)、
演技や演出は当然のように微妙かつ決定的に違っていて、
その部分がまさに、ことごとくハズしているという。
特に音楽の使い方には、いちいちガッカリさせられました。その一方で、
登場人物全員がオーバーアクト気味なのは、
悪い意味で黒澤節を忠実に継承し過ぎた結果のような。
青島刑事が三船のモノマネしてる的な
言わば「新春かくし芸大会感」には、
悲しいかな意外と結構慣れてきてしまうんですが、
最後に出てくる藤田まことは、本当に良くなかったと思う。
その台詞は、もっとはっきり皮肉っぽく言わないと、
逆に感じ悪く見えますよ〜。しかし、ここはあえて5億歩譲ってみる。
あぁ頑張ったんだなぁというところが
まったく無いわけでもないし、
脚本という骨格がちゃんとしてるぶん、
そこらの箸にも棒にもかからない完全新作よりはそりゃ、
はるかに楽しめてしまうのも事実。それにしたって。
事前に多くの人が
「いったいどう処理するつもりなんだ?」と、
懸念しつつも楽しみにしていたであろう最後の決闘……
それも同じロケ地で同じ構図という、
わかりやすい「正面勝負」に出たというのに……
この拍子抜けっぷりは、
いくら何でもどうなんだ。いやもちろん、
元の脚本にもちゃんと書いてなかった部分なんだし、
そもそもリメイクなんだから、
勝算があるなら、変えること自体は全然いいんですよ。
しかし、どうやるのであれ、最低限あそこは、
「人を斬るということ」の無残さ、その真の姿を、
若侍衆≒観客に容赦なく見せつける、
ということには挑まないといけない場面でしょう
(でないと、奥方の伏線的台詞を受けたその後のエンディングが、
えらく意味の弱いものになってしまう)。
しかるに今回は、
どれだけ好意的に解釈したとしても、
黒澤版の顛末を観客が知っているという前提で
辛うじてサプライズになるかどうかの
「ハズし」にしかなっていないし、
モタモタと説明的なわりに、新鮮味もカタルシスもない。
つまり、物語上の機能から言っても、
映画表現の進歩という点から言っても、
45年前の作品から、
明らかに大きく後退してしまっているという……
これには本当に、心底失望させられました。
今の時代、「過激な暴力描写」があると、
年齢制限とか付いちゃうからだって?
そんな腰が引けた姿勢なんだったら、
どうしたってその要素が付きまとう『椿三十郎』なんか、
最初からやらなきゃいいじゃん!
と思ってしまうのは私だけではないでしょう。ちなみに、
もし私だったら、
血がブシューッ!までは同じにしておいて、
その後、
「室戸がすぐには息絶えず、凄絶な死に際を晒す」
というのを見せたいなと。
三十郎が苦渋の表情でとどめをさすという、
素晴らしいシーンになりますよきっと! ダメ?
じゃなきゃ、
こっちのが現実的な手ってことになるんだろうけど、
三船=三十郎イメージを思いきって捨てて、
より山本周五郎の原作寄りな
——つまり決して剣は強くない——キャラクターに戻すとか。
無論それに合わせて全体を見直すことになるけど、
その方が織田裕二主演というのがずっと活きて、
「現代的」に成功したんじゃないかという気もします
(単に最近の山田洋次時代劇、
もしくはそれこそ『雨あがる』っぽくなる、
ってことかも知れませんが)。いずれにせよ、
黒澤映画だからって、
すべてが完璧にして不可侵な傑作や名作だなどとは、
私はまるっきり思ってないけども、
少なくとも『椿三十郎』に関して言えば、
今後は結構な割合の人が、どうしたってこの、
煮え切らないリメイク版の方を先に観てしまうわけで、
それはやっぱり、
不幸な事態と言うほかないとも思います。
旧作との不毛な比較はやめて素直な気持ちで接してほしい、
なんて言い草は逃げだよ!
これに限らないけど、
画質や音質をリファインしたオリジナル版を、
最新設備の整った劇場で
ドカンとリバイバル・ロードショーしてくれたりする方が、
正直よっぽど嬉しいし意義深いんじゃないか、と、
こないだの『ブレラン』上映で思ったりもしましたが、
まぁ、それはモノにもよるか。(宇多丸)
profile
このBLOGについて
【管理:スタープレイヤーズ】ライムスターメンバー、スタッフが書き込みます。
2018年10月に旧ライムスターブログ、11月にマボロシブログ『マボロシ 坂間大介 Rec日記』を統合し、全ての時代のライムスターブログがここに集まりました。
RHYMESTER(ライムスター)
1989年結成。宇多丸(ラッパー)、Mummy-D(ラッパー/プロデューサー/またグループのトータルディレクションを担う *作編曲家としての名義はMr. Drunk)、DJ JIN(DJ/プロデューサー)からなるヒップホップ・グループ。自他共に認める「キング・オブ・ステージ」。フィジカルとエモーションに訴えかけるパフォーマンスと、当意即妙なトークによって繰り広げられるライブに定評がある。1980年代後半、まだヒップホップが広く一般に認知されるはるか前より「日本語でラップをすること」の可能性と方法論を模索。並行して精力的なライブ活動を展開することによってジャパニーズヒップホップシーンを開拓/牽引してきた。近年はグループとしての活動に加え、各メンバーがラジオパーソナリティーや役者など活躍の場を拡大。結成30周年を迎えた2019年にはアニバーサリー企画としてグループ史上最大規模の47都道府県48公演に及ぶ全国ツアーを敢行、成功へと導いた。
links
RHYMESTER Official Site
www.rhymester.jp
RHYMESTER Official Twitter
@_RHYMESTER_
RHYMESTER Official Instagram
@rhymester_official
DJ JIN Official Twitter
@_DJ_JIN_
アフター6ジャンクション|TBSラジオ
www.tbsradio.jp/a6j
BUBKA WEB(ブブカ・ウェブ)
www.bubkaweb.com
F30プロジェクト〜リーダーとして働く女性へ〜 by女子部JAPAN
joshibujapan.com
バラいろダンディ | TOKYO MX
s.mxtv.jp/barairo
recent posts
categories
archives
- 2025年1月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年4月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月
- 2013年3月
- 2013年2月
- 2013年1月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月
- 2012年9月
- 2012年8月
- 2012年7月
- 2012年6月
- 2012年5月
- 2012年4月
- 2012年3月
- 2012年2月
- 2012年1月
- 2011年12月
- 2011年11月
- 2011年10月
- 2011年9月
- 2011年8月
- 2011年7月
- 2011年6月
- 2011年5月
- 2011年4月
- 2011年3月
- 2011年2月
- 2011年1月
- 2010年12月
- 2010年11月
- 2010年10月
- 2010年9月
- 2010年8月
- 2010年7月
- 2010年6月
- 2010年5月
- 2010年4月
- 2010年3月
- 2010年2月
- 2010年1月
- 2009年12月
- 2009年11月
- 2009年10月
- 2009年9月
- 2009年8月
- 2009年7月
- 2009年6月
- 2009年5月
- 2009年4月
- 2009年3月
- 2009年2月
- 2009年1月
- 2008年12月
- 2008年11月
- 2008年10月
- 2008年9月
- 2008年8月
- 2008年7月
- 2008年6月
- 2008年5月
- 2008年4月
- 2008年3月
- 2008年2月
- 2008年1月
- 2007年12月
- 2007年11月
- 2007年10月
- 2007年9月
- 2007年8月
- 2007年7月
- 2007年6月
- 2007年5月
- 2007年4月
- 2007年3月
- 2007年2月
- 2007年1月
- 2006年12月
- 2006年11月
- 2006年10月
- 2006年9月
- 2006年8月
- 2006年7月
- 2006年6月
- 2006年5月
- 2006年4月
- 2006年3月