homerhymester blog20060510
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(前日記の補足)一応バランスを取るために
2006.5.10 18:59:00
『ダーウィンの悪夢』の視点は(多分に“ヨーロッパ的に”)偏っている、
という批判も少なくないので、そのあたりのリンクを貼っておきます。
http://jatatours.intafrica.com/habari49.html
まぁこの人はタンザニア旅行のコーディネーターしてるんだから、
ムカッと来るのは当然だよな。
もちろんこんな「暗部」だけがムワンザやタンザニアの全てではないでしょうし、
その意味で言えば『ダーウィンの悪夢』が、
意図的にショッキングなエピソードを羅列している、
やはり一種の「モンド映画」なのは間違いないと思います
(あ、でも、ヤコペッティ的な『ヤラセ』とは全く違いますが、もちろん)。ただ、公式HPで監督が
「同じような映画はシエラ・レオーネ
(筆者注:カニエの歌に出てくるあそこですね)
でも撮れただろう、
魚がダイヤモンドに変わるだけで。
ホンジュラスならバナナだし、
リビアやナイジェリアやアンゴラなら原油だ」
と語っているように、
このフィルムが提示しようとしている問題は、
もう少し普遍的なものであるような。
ま、例えばそういう「モノカルチャーの功罪」の
“罪”だけにスポット当て過ぎって言われてもいるわけだけど……
えーとだからアレだよ、
完全に「中立な」作品なんて有り得ないんだから、
何であれ、それを分かった上で見ろってことです!
当たり前の話なんだけど、
ことドキュメンタリーに関しては
「中立」幻想が根強い気もするので、改めて。(宇多丸)
-
楽しい日記の合間にすいやせんねぇ
2006.5.10 02:57:00
(注意!:以下、本当に気が滅入る話である上に、
画像が多いこともあって恐ろしく長い記事になってしまったので、
興味がない人はさっさと飛ばすことをお勧めします)ということで前にこの日記
/rhymester/blog/2006-04-25
で触れたドキュメンタリー、
『ダーウィンの悪夢』
(公式HP http://www.darwinsnightmare.com/)。
訛りのきっつい英語に苦労しながらも、
前にもリンクを貼った柳下殻一郎さんの日記や、
http://www.ltokyo.com/yanasita/diary/05101.html
DVDを貸してくれた高橋ヨシキさんの解説にも助けられつつ、
何とか観終わりました。
やはり壮絶な内容だった……
「この世には地獄が存在します。この映画こそその証拠です」
(前述柳下さん日記より)と思ってたら何だよ、
今年の3月だかにNHKのBSで放映したらしいじゃん!
字幕だってバッチリ付いてたってことだよな。
くそっ、単に俺が遅いだけだったのか……
このためにプレイヤーまで買って、バカみたいだ!
まぁ飛躍的に観れるソフトの幅が拡がったから
それはそれで全然いいんだけどさ。
ともあれもう、頑張って画面撮りもしてしまったので、
いくつかハイライト・シーンをご紹介。これが問題の魚、ナイルパーチ。
60年代にアフリカ最大の湖、ヴィクトリア湖に放され、
あっと言う間に他の魚を食い尽くしてしまう。
舞台となるタンザニア側の湖畔の土地、ムワンザでも、
昔から営まれてきた漁業は壊滅。
その代わり、このナイルパーチをこんな風に
ザクザク
工場で切り身にして海外へ輸出する一大産業が出現した
(日本でも回転寿司などでスズキと称して出されているそうです)。そのための貨物機が頻繁に行き来する地元空港。
しかし通信機が故障したままなため、
常にテンパりまくっている管制官が
ランプを手で動かして何とか着陸を誘導している。
こんな調子だもんで滑走路近くには
いくつもの飛行機の残骸が散らばりっ放し。
また、ウクライナ人パイロット操るそれら貨物機の積み荷は、
飛び立つ時にはもちろん魚だが、
やって来る時は銃や兵器なのではないかという疑惑が。ところでこの加工ナイルパーチ、
高価なので、
今や唯一の地場産業である工場で職を得ていない
地元の貧乏人たちにはまず、食べられない。
かつては湖で小魚がいくらでも採れたんだけど……
そこで人々が何を食っているかと言うと。
工場からは、ナイルパーチを切り身にした後の残り、
つまりアラが大量に捨てられる。
見渡す限りの魚の残骸。それを……
手で拾って干す。
文字通り正視に耐え難い光景なのでここに画像は載せないが、
そこらじゅうに蛆虫がうごめきまわる、
信じ難いほど不衛生な環境。
汚物から生じるアンモニアガスによって、
ここに従事する一人の女性の片目は完全に腐れ落ちている。
そうして干したアラを鉄鍋で揚げて
何とか食べ物にしているわけだ。
工場を経営しているのは外国人、多分インド系。
(訂正:インド系のタンザニア人だそうです)
壁に貼られるカレンダーにはこんな言葉が。
「あなたは巨大なシステムの一部なのです」
あるいは、
オフィスにある置物を社長が作動させると……
魚がピョコピョコ動いて、
ボビー・マクファーリンの『Don’t Worry, Be Happy』を歌い出す……
まるで出来過ぎた悪質なジョーク!
ヒップホップ畑の人間としてはここで当然のように
パブリック・エネミー『Fight The Power』の歌詞を
思い出さずにはいられませんでしたYO!
「『Don’t Worry, Be Happy』がNO.1ヒットだって?
ふざけんな!
俺が同じことを言ったら今この場で殴られても仕方ねぇだろうぜ」すでに述べたように産業は魚工場しかないので、
そこで働けない女性は売春でもするしかない。
これまた当然のようにエイズも蔓延しまくっているのだが、
指導者としてコンドームの使用をもっと積極的に呼びかけるべきでは、
との問いに、地元の神父はこう言い放つ。
「えーとあの、コンドームは(カトリックでは)罪だから」その一方、会心の笑みで
「早く戦争になんねぇかなぁ〜」と語る「水産研究所」警備員。
「だってそれが一番稼げるからな」
「えっ何、お前、戦争怖いんだ?
(心底不思議そうに)あっそお。へぇ」
彼は毒を塗った矢と弓で武装している。奪い合った食べ物を凄まじい形相で貪るストリート・チルドレン。
彼らが湖のほとりで燃やしてその煙を吸っているのは……
魚の運搬用の発砲スチロールだ。
ドラッグ代わり、いつでもどこでも眠れる効果があるという。
異常行動を招くこともあるなどという例を挙げるまでもなく、
危険極まりない行為。
もちろん、二度と起きてこない子もいる。
全てはあの、外来魚の放流から始まった……
しかし、そのナイルパーチの収穫量も、
このところ年々激減しているという。
残されたたったひとつの資源も食いつぶしたその後は、
どうする、どうなる?とまぁ、環境破壊以上に、
社会システムと何より人心の荒廃に
より深刻な「取り返しのつかなさ」を感じさせる、
実にハードかつモンドな一編でした。
件のBS放映時の録画とか観る機会があったら皆さんもぜひ……
て言うかそれは俺も観たいんだよ!おまけとして、
数年前、某テレビ番組の企画で
このヴィクトリア湖に(ケニア側から)訪れた日本の若者たち。
ちなみにこれは「ケニア流の洗車」らしいから
特に彼らが何か傍若無人なわけじゃないんですよ、念のため!(宇多丸)
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このBLOGについて
【管理:スタープレイヤーズ】ライムスターメンバー、スタッフが書き込みます。
2018年10月に旧ライムスターブログ、11月にマボロシブログ『マボロシ 坂間大介 Rec日記』を統合し、全ての時代のライムスターブログがここに集まりました。
RHYMESTER(ライムスター)
1989年結成。宇多丸(ラッパー)、Mummy-D(ラッパー/プロデューサー/またグループのトータルディレクションを担う *作編曲家としての名義はMr. Drunk)、DJ JIN(DJ/プロデューサー)からなるヒップホップ・グループ。自他共に認める「キング・オブ・ステージ」。フィジカルとエモーションに訴えかけるパフォーマンスと、当意即妙なトークによって繰り広げられるライブに定評がある。1980年代後半、まだヒップホップが広く一般に認知されるはるか前より「日本語でラップをすること」の可能性と方法論を模索。並行して精力的なライブ活動を展開することによってジャパニーズヒップホップシーンを開拓/牽引してきた。近年はグループとしての活動に加え、各メンバーがラジオパーソナリティーや役者など活躍の場を拡大。結成30周年を迎えた2019年にはアニバーサリー企画としてグループ史上最大規模の47都道府県48公演に及ぶ全国ツアーを敢行、成功へと導いた。
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