homerhymester blog20060511post
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またも本当に気が滅入る話ですいやせんねぇ(文章アップ済)
2006.5.11 23:50:00
(注意!:嫌な気分になりたくない人、
特に猟奇事件が苦手な人はとっとと飛ばすように!)ということで最近一気に読み終えた本。
『消された一家 北九州・連続監禁殺人事件』
(豊田正義/新潮社)
一人の男の支配下で、
監禁された(壮年男性から10歳以下の児童までを含む)家族が、
暗に(←ここポイント)命じられたままに
互いに監視、虐待、拷問を繰り返し、
ついには順番に殺害、遺体の解体にまで手を染めていったという、
にわかには信じ難いほど異常なこの事件。
「え、何でそんなことになっちゃうの?」という疑問が解消されないまま
ずっと頭の隅に引っかかっていたので、
前からこのノンフィクションは読みたかったのです
(同じ事件を扱った佐木隆三版も近いうち読み比べなきゃなと)。例えばこれが、
いやぁコイツはとんでもない快楽殺人鬼でした、
という話なら、
そうやってカテゴライズ出来るぶんある意味安心出来るというか、
テレビのワイドショーなどでもずっと
(あえて言わせてもらえば『エンターテインメント』として)
取り沙汰しやすかったのではないかと。
でもこの主犯格:松永太、
客観的に見ればよくいるエゴの肥大した俗物でしかなく、
殺人や遺体解体も、
ゴミを出すとか洗濯物を干すとかと同じく、
「めんどくさいけど、やるか」的なごく日常の実務のようにこなすばかりで、
そこに「快楽殺人」的なファンタジーの介在する余地が全くない。
拷問や虐待だってサディズムって言うほど立派なもんじゃないっていうか、
思想性は皆無、単にエバるための手段のような。
つまり、事の重大さに対して余りにもその実像が軽く、
だからこそより救いがないという。
その点、「ボディーは透明」という、
これまたしょーもなくも恐ろしい名言で知られる
「埼玉県愛犬家連続殺人事件」主犯:関根元にも通じるあたり。
まぁ彼の場合は解体中の死体を嬉々として屍姦するような
分かりやすい「怪物性」も垣間見せるのに対し、
松永は徹底して「自分の手は汚したがらない」ところにまたミソがあるのですが。
ちなみに「ボディーは透明」の詳細については
犯罪実録物の傑作『共犯者』(新潮社)をぜひ!
(現在は『愛犬家連続殺人事件』に改題して
角川文庫から出ています
……と思ったら、どうやらこちらも絶版?)話を「消された家族」に戻しますと、
じゃあ被害者たちは、
何だってそんな安っぽい男の馬鹿げた命令に大人しく従って、
自ら家族を手にかけるという本来なら最も避けたいであろう行為や、
いずれは自分の死をも招くに違いないはずの過酷な状況さえ、
易々と受け容れてしまった(ように見える)のかと。
抵抗したり、脱出したりすることも出来たはずではないかと、
当然そういう疑問が出てくるわけですが。
私が思うに、
人間関係、特にその力関係は、
いったん固定されてしまうと後からそれを覆すのはなかなか難しいと。
例えば、ある集団の中で特に強い発言力を持つ人物がいるとして、
時に彼の言うことに多少の違和や嫌悪を感じることがあったとしても、
それをわざわざ表明することで、
彼との関係性、ひいてはその集団と自分との関係性が
根本から壊れてしまうようなリスクは避けたいと考えるのが人情というもので、
とりあえずはそれを我慢して承認してしまう……
というようなことは、
「普通の」人生にもしばしば起こる話なわけです
(もしかしたら自分が『彼』側のパターンもあるでしょう)。
だとしたら、それが「閉じた」集団であればあるほど、
「多少の違和や嫌悪」の度合いがどんどん常軌を逸していったとしても、
当人たちにはそうと自覚されない可能性は十分あるはず。
家族同士が「互いに監視、虐待、拷問を繰り返し、
ついには順番に殺害、遺体の解体にまで手を染めていった」
という「信じ難いほど異常な」行為は、
やはり全くもって日常的な風景の延長にあったからこそ、
可能になったのです。松永サイドの親類が一切取材拒否しているため、
成育環境などそのバックボーンはほとんど掘り下げられていないのが
本書の弱点と言えば弱点なのですが、
以上に述べたような理由から、
多分そこからはそれほど大した話は出て来ないのではないか、
という気が私はします。
「自分に可能な範囲で他人を徹底的に支配したがる」ヤツなんて、
つまんないもの、ありがち過ぎて。そして、だからこの事件は、本当に不快なのです。
(宇多丸)
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【管理:スタープレイヤーズ】ライムスターメンバー、スタッフが書き込みます。
2018年10月に旧ライムスターブログ、11月にマボロシブログ『マボロシ 坂間大介 Rec日記』を統合し、全ての時代のライムスターブログがここに集まりました。
RHYMESTER(ライムスター)
1989年結成。宇多丸(ラッパー)、Mummy-D(ラッパー/プロデューサー/またグループのトータルディレクションを担う *作編曲家としての名義はMr. Drunk)、DJ JIN(DJ/プロデューサー)からなるヒップホップ・グループ。自他共に認める「キング・オブ・ステージ」。フィジカルとエモーションに訴えかけるパフォーマンスと、当意即妙なトークによって繰り広げられるライブに定評がある。1980年代後半、まだヒップホップが広く一般に認知されるはるか前より「日本語でラップをすること」の可能性と方法論を模索。並行して精力的なライブ活動を展開することによってジャパニーズヒップホップシーンを開拓/牽引してきた。近年はグループとしての活動に加え、各メンバーがラジオパーソナリティーや役者など活躍の場を拡大。結成30周年を迎えた2019年にはアニバーサリー企画としてグループ史上最大規模の47都道府県48公演に及ぶ全国ツアーを敢行、成功へと導いた。
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