homerhymester blog20060601
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またリハ!
2006.6.1 22:11:00
いいかげんこれで最後だろう。
(6月1日18時07分)(宇多丸)
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『半落ち』とは、
2006.6.1 05:07:00
思わせぶりな伏線が本当に思わせぶりなだけで終わるなど、
物語の結末が十分に「オチてない」状態を指す
……なんちってな。
なんか思い返すたびに違和感が増してきたので改めて書きます。
(/rhymester/blog/2006-05-25参照)
長い上に多分つまらなくて
(特にすでに映画『半落ち』を観て泣いちゃったりしてる人には)
不快な文章だからみんな読まなくていいよ!
自分用!アルツハイマー病を患った妻を献身的に介護し続けてきた、
超優秀な刑事であり誰もが認める人格者、が、
半ば本人に請われるかたちでその妻を殺害した、と自首してきたと。
ある種古典的な嘱託殺人として落着するかに見えた事件だったが、
なぜか彼は、殺害から自首までの二日間の行動に関しては、
頑なに口を閉ざしたままだった。
彼がそこまでして「守りたいもの」とは何か?
真相を究明すべく彼に接触した人々は、次第に、
それぞれの人生における「守りたいもの」と
否応なしに向き合ってゆくこととなる
……とまぁ、ここまでがパッケージにも書いてある程度の、あらすじ。
で、以下からネタバレ領域です。実は、彼の衣服のポケットには、
新宿歌舞伎町の、テレクラ宣伝用ティッシュが入っていた!
清廉潔白な愛妻家には似つかわしくない疑惑が急速に浮上……
場合によっては嘱託殺人という自白の信憑性も揺らぎかねない。
うむっ、こりゃあ俄然面白くなってきましたよぉ〜っ!……ところが事実はこうだった。
彼と妻の間にはかつて、
骨髄のドナーが見つからず、
若くして亡くなった一人息子がいた。
その経験から、夫妻は骨髄バンクに登録しており、
後年ついに妻がドナーとなってある少年の命を救うこととなる。
そして、小さな新聞記事から偶然、
その少年が歌舞伎町のラーメン屋で元気に働いていることを妻は知る。
あたかも息子の生まれ変わりであるかのように、
まだ見ぬその少年への思いを連綿とノートにつづる妻。
妻を殺害後(ここは一応尊厳死というテーマに触れるわけだが、
介護殺人という現実的な問題にはほとんど踏み込まず、
夫婦愛の在り方、魂と生命の価値とかいう抽象的な話がメインになってしまう
……のだがまぁ、それは置いといて)、
一度は後追い自殺を考えた夫は、
妻が遺したノートを発見して思いを改め、
力強く生きる少年の姿を確認するため歌舞伎町へ向かったのだった……
自らのドナー登録期限が切れる、
その日に命を絶つことを決意しながら。
彼がその一連の行動について口を閉ざしていたのは、
少年に迷惑が及ぶことを恐れてのことだったのだ。はー……
って、何それ?
要するにアレですか、
「歌舞伎町」っていうのは、
「清廉潔白な愛妻家には似つかわしくない疑惑」に
ミス・リーディングするための記号でしかなかったわけですか。
だってラーメン屋なら歌舞伎町である必要全くないでしょう。
逆に、わざわざ歌舞伎町っていう地名を出したんなら、
例えばその少年が問題のティッシュのテレクラでバイトしてるとか、
あるいはキャバクラのボーイとかホストとか、
もしくは少女っていう設定にして、
それこそヘルスで「元気に働いている」とかって方がよっぽど自然だし、
ずっと深く「生きる」ってことの意味を考えさせていいじゃないですか!
少なくともそれが合法的なものである限りは、
素直に「いわゆる歌舞伎町」のイメージにそった職種を選んでも
物語上何の支障もなかったはず。
なのにあえてそうしなかったのは……
とにかく夫&妻&息子=少年だけは最初から最後までずっと、
誰の目から見ても明らかに聖人の如く「清廉潔白」でしたと、
その結論こそ作り手がここで「守りたいもの」だったから、でしょう。
つまり、
彼ら自体は最初の見た目通り全く「いわゆる歌舞伎町」的ではない、
すなわちどこにあろうと決して汚されることのない
「絶対的な好人物」(って、アホか)であるということを、
落差を利用して結果的に際立たせ再確認するためだけに、
この街の「マイナス」(と作り手が思っている)イメージは利用されたと。
そういう薄っぺらで、何より無礼な人間観が、
そこかしこに見え隠れして不快なのです。で、それをまた、見るからに高潔そうな、
悪いことしなさそうな寺尾聡とかが演じて、
実際やっぱり高潔で悪い人じゃありませんでしたって!
だったら姉歯建築士みたいなルックスの人がやんなきゃダメでしょ!
主演、生島ヒロシ!
まぁ、幼児的な願望としての理想化されたキャラクター造型というものが
一概に悪いとは言わないけれども。
明らかに大人向けの「人間ドラマ」的な体裁、
しかも表面的な事件性の背後に隠された真実を追う、
というミステリー仕立てをとっているくせに、
最終的に明らかになるのがこの、
「イイ人!
途中、ひょっとしてそこまでイイ人じゃないのかな?
とも思ったけど……
何のこたぁないそれは誤解で、
間違いなくイイ人!
ということが分かりました」的な
恐ろしく奥行きのない美談っていうのは、
やっぱりいくら何でもダメだろうと私は思いますよ。正直、前半の、
「真相を究明すべく彼に接触した人々は、次第に、
それぞれの人生における『守りたいもの』と
否応なしに向き合ってゆくこととなる」、
それゆえ肝心の事件そのものの真相は次々と先送りにされていく、
つまり語り手がどんどんバトンタッチしてゆく、
という構造は、ちょっと面白いと思ってしまったんですよ。
そのまま最後まで行っちゃって、
それこそ『市民ケーン』ばりに、
「実は本当にささやかな、
しかし当人にとっては何よりも大切なコレが真相でした」
というのを、観客だけにさりげなく示して終わるとか、
だったらまだ「キレイなオチだねぇ」で済んだのになーと。
あとはもう、例えばエンド・クレジットが出きった後に、
実はあの日ラーメン屋で少年を見届けたあと、
夫婦生活もカミさんボケちゃってから長いこと無かったし、
せめてムショ入りする前にと思い、
ヘルスで一発抜いちゃってましたぁ、テへッ!とか、
人間存在の深遠に迫るどんでん返しでもくっつけるしかないよ!そう言えば、冒頭で逮捕前に自殺を図る幼女連続殺人の容疑者も、
「こんなヤツでさえ落とし前は自らつけようとするのに、
何であんな高潔な愛妻家がおめおめと……」という話題を出すための、
本当にどーでもいい背景でしかありませんでしたね。
まさかその話が後半一切出てこなくなるとは思わなかったよ!
付け加えるなら、エンディングで流れ出す歌も壮絶でしたね……
まぁテレビの2時間ドラマと思えばそんなに腹も立たないんでしょうが。やはりね、
本当の「人間ドラマ」ってのはね、
例えばこういうことですよ。人をさらってきては裏庭に埋めて北京ダック方式で太らせ、
豚肉と一緒に調理して自家製ベーコンとして売りさばいてきた男。
しかし彼は断じて快楽殺人鬼などではない。
ただひたすらに、美味しくて安全で安価な食物を地域社会に提供したい一心、
さらに言えば、
増え続ける世界人口に対して悪化の一途をたどる食糧事情、
それを一石二鳥に解決する畜産技術を追求してきたがゆえの、
言わば人並み外れて高い職業意識と理想の持ち主ゆえの行為だったのだ。
その彼が、ついに息絶える寸前、
突如殊勝な懺悔を始める
こんな風に自分のことを言えるだけでも、
結局あんまりテメエの非は認めてない感じもする
『半落ち』の主人公より一万倍「高潔」ですよ!
で、何だって?
……人肉以外に入れていた「何か」について、
続きのセリフはぜひ
映画『地獄のモーテル』を観て
(そういう機会があなたの一生のうちに来ればですが)
確認していただきたいですが、
とにかく、
彼が最後まで「守りたかったもの(そして守れなかったもの)」
のリアルさにこそ感動してほしいものですよ!
人間だもの!とまぁ、ワーワー勝手なこと書いてきましたがね。
それでも『クイール』の最初の45分に比べれば、
やっぱ映画史に残る傑作に思えてくることに変わりはありませんYO!(宇多丸)
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このBLOGについて
【管理:スタープレイヤーズ】ライムスターメンバー、スタッフが書き込みます。
2018年10月に旧ライムスターブログ、11月にマボロシブログ『マボロシ 坂間大介 Rec日記』を統合し、全ての時代のライムスターブログがここに集まりました。
RHYMESTER(ライムスター)
1989年結成。宇多丸(ラッパー)、Mummy-D(ラッパー/プロデューサー/またグループのトータルディレクションを担う *作編曲家としての名義はMr. Drunk)、DJ JIN(DJ/プロデューサー)からなるヒップホップ・グループ。自他共に認める「キング・オブ・ステージ」。フィジカルとエモーションに訴えかけるパフォーマンスと、当意即妙なトークによって繰り広げられるライブに定評がある。1980年代後半、まだヒップホップが広く一般に認知されるはるか前より「日本語でラップをすること」の可能性と方法論を模索。並行して精力的なライブ活動を展開することによってジャパニーズヒップホップシーンを開拓/牽引してきた。近年はグループとしての活動に加え、各メンバーがラジオパーソナリティーや役者など活躍の場を拡大。結成30周年を迎えた2019年にはアニバーサリー企画としてグループ史上最大規模の47都道府県48公演に及ぶ全国ツアーを敢行、成功へと導いた。
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