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homerhymester blog20060612

• 岩波ホール、じゃなくてシネパトス

  2006.6.12　05:57:00

  Utamaru

  
  前にこのブログでも軽く触れたロシア映画『太陽』、
  興味ありそうな人にDVD貸そうにもPAL方式だし、
  いっそ何人か呼んで上映会やるかな、
  などと思っていたところ、
  
  『週刊新潮』6月15日号に
  監督アレクサンドル・ソクーロフのインタビューが載っていて、
  その記事によると、
  8月5日から銀座シネパトスでの公開が決定しているそうです！
  季節的にもバッチリじゃないですか？
  いやー、何しろこちとら、
  敗戦前後の昭和天皇を（それも極めて『人間的に』）描いているというだけで、
  この国では（主にテロリズムを恐れて）タブーとして扱われてしまうんじゃないか、
  つまり普通に劇場公開するのは難しいんじゃないか、
  だとしたらなんつー文化的後進国なんだ！と一方的に憤ったりしてたもんで、
  それが意外とあっさり杞憂に終わって、
  ホントに良かった良かった！
  むしろそうやって、こっちで勝手に抑圧を先取りしちゃうクセこそが問題だよな、
  いかん、いかんねー。

  そのインタビュー記事では、
  ひょっとすると無事に公開までこぎ着けるための配慮もあるのでしょうか、
  ひたすら全面的な昭和天皇礼賛に徹している監督
  （逆に海外では好意的な描写こそが物議を醸したらしい）
  （念のため追記：少なくともここで彼が語っていることに関しては、
  私にはおよそ同意出来ない部分も多い）ですが、
  実際にこの映画を観て考えさせられることは、
  それほど単純なものではありません。
  そして、だからこそこれは、
  思想信条の違いを越えて一見の価値ある作品になっているのだと思います。
  考証的に明らかに史実と違うと思われるところ
  （というかむしろ意図的なフィクション部分なのでしょう）
  もいくつかあるのですが、
  そこをいちいちあげつらうのは無論余り本質的ではなく。
  それよりここで語られようとしているのは、
  「ああ、なるほど天皇裕仁とは、確かにこういう人だったのだろうなぁ」
  「しかしこれって、世界史的に見てもやっぱかなり特異な立場だよなぁ」
  と観る者にはっきり「実感」させることで浮かび上がる、
  ある意味普遍的な個人vs歴史の物語なのではないかと。
  もちろん、それを支えるイッセー尾形の圧倒的な「なりきり」ぶり、
  佐野史郎や桃井かおり（これも名演！）らとの
  アドリブ的なやりとりから生まれるオフビートな笑い、
  後はCGを駆使して描かれる東京大空襲の奇怪な悪夢とか、
  つまるところ映画としてちゃんと魅力的なのだということは、
  改めて強調しておいていいところかも知れません。

  それにしても……
  なぜにシネパトス？
  まぁ、要は「ここしかなかった」ってことなんでしょうが
  （ちなみに今回の勇気ある配給会社の名前は、
  奇しくも『スローラーナー』）。
  それって結局、この国で「普通に劇場公開」出来てるとは、
  まだまだ言い難いってことかも知れませんね……
  まぁいい、とにかく皆さん、この機会を絶対にお見逃しなく！

  （宇多丸）

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